20代後半の女性です。仕事と職場の人間関係がうまくいかず、気が付いたらツムジの近くに10円玉ぐらいの円形脱毛症が。どうすればいいのでしょう?
A.精神的ストレスだけが脱毛症の原因ではないので、ゆったりとした気持ちで治療しましょう。
円形脱毛症は、毛包に対する自己免疫反応が原因と言われています。疲労や感染症、強い精神的なストレスなどが加わるとリンパ球などの免疫反応が変調し、毛包に炎症が起こって毛が抜けるのではないかと考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。約2割の患者さんに家族にも円形脱毛症になった人がいて遺伝的素因も指摘されています。10~ 20歳代に多く、女性患者さんが多いように感じられますが実際には男女の差はありません。爪の変形やアトピー性皮膚炎、甲状腺機能障害、膠原病などが合併していることもあります。
4ヵ月~ 1年で自然治癒する場合もありますが、症状に応じて治療法を選択します。毛髪の血行を良くするフロジン外用薬、自己免疫反応や炎症を抑えるステロイド外用薬は脱毛斑より少し広めに塗布します。患部に直接ステロイド注射をする局注治療はとても効果的ですが、陥凹変形など副作用があるので様子を見ながら1か月に1~ 2回行います。局所免疫療法はスクアレン酸ジブチルエステル(SADBE)などを用いて人工的にかぶれさせ、免疫反応を変化させる治療法です。ただし、アトピー性皮膚炎やかぶれを併発している場合は悪化する可能性があります。
抗アレルギーや免疫調整作用のあるセファランチン内服薬やグリチロン内服薬、アトピー素因のあるかたには坑アレルギー剤内服薬を併用します。また、ステロイド内服薬は重度の場合に大幅な改善がみられることがあります。
難治性の場合はエキシマライトを使用したターゲット型光線治療を行います。紫外線を使った治療法で、病巣部分に照射する事によって過剰化したリンパ球などの免疫反応の抑制に効果があります。照射時間は数10秒ほどで疼痛はありません。1週間に1~ 2回照射します。
日常生活の制限は特にありませんが、頭髪に緊張がかかる髪型や強いブラッシングは毛の脱落を促進し不安につながるので気をつけます。また、脱毛を気にして洗髪が十分にできなくなることがありますが、洗髪することで病気が進行するわけではないので怖がらずに洗髪し清潔を保ちましょう。
精神的なストレスは円形脱毛症の始まるきっかけになることはあっても直接の原因ではありませんので、精神的なストレスについてあまり考えすぎないようにします。脱毛治療は発毛がみられるまで最低でも4~ 5ヵ月かかりますから、あせらず治療をしていきます。心配しすぎることもストレスになりますので、のんびり治療するぐらいの気持ちが大切です。