以前から、耳、首の周り、ひざやひじの内側に繰り返し湿疹が出てかゆくなります。これはアトピーでしょうか?原因は?
A.特徴的部位に繰り返し湿疹が出るのは「アトピー性皮膚炎」の可能性があります。
かゆみを伴う湿疹が、目や耳の周り、首、ひざやひじの内側など、特徴的な部位に繰り返し出るのがアトピー性皮膚炎。大人なら6か月以上、子どもなら2か月以上、症状が繰り返し現れるのが特徴です。多くが生後4か月から2歳までに発症して小学校卒業ぐらいまでに治りますが、小学校入学後や大人になってから発症することもあります。
アトピー性皮膚炎の原因はさまざまですが、その一つとしてあげられるのが、皮膚のバリア機能の低下です。角質にあるセラミド脂質成分や皮膚の水分量が生まれつき少ないと、皮膚が外部からの刺激を受けやすくなります。皮膚を守るため、入浴後5分以内に保湿剤を塗るなど、日ごろから保湿対策を心がけましょう。
また、患者の8割が持つというアトピー素因も原因の一つで、本人や家族がぜんそく・花粉症・食物アレルギーなど、何らかのアレルギー疾患がある場合が、これにあたります。外部の刺激に反応して作られるIgE抗体(※)が通常より多く作られる体質だと、少しの刺激にもIgE抗体が作られてヒスタミン成分を放出しかゆみを引き起こします。このように体質が原因の場合は、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬などの内服薬を中心に治療します。
ほかに、大人の患者に多く見られるのが、ストレスや、ダニ・ハウスダストなどの環境が原因の場合です。
アトピーの治療は保湿外用薬や内服薬、外用薬など、原因や症状に合った方法で進めます。近年ではアトピーの治療薬も増えています。
外用薬はステロイド、プロトピック(タクロリムス外用剤)の他に、モイゼルト軟膏「PDE4阻害剤」、コレクチム軟膏(外用ヤヌスキナーゼJAK阻害剤)などがあります。
また、中等症以上の患者さんでステロイド外用剤やタクロリムス外用剤など、既存治療で適切に治療をおこなっても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ場合にデュピクセント(ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクロナール抗体)という注射薬も使用されます。
いずれの場合も適切なアトピーの治療を継続して行うことが重要です。
(※)IgE抗体 外部から侵入してきた抗原(アレルゲン)に対し、人体は抗体を作って反応します。抗体には5種類あり、IgEはアレルギーや気管支ぜんそくの抗体になります。