夏になると、ワキが汗でびしょびしょ。夕方になると臭いが気になってしまいます。ワキガではないかと不安です。
A.「ワキガ」と「多汗症」は違います。きちんと診断を受けましょう。
汗を分泌する汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。「エクリン腺」から分泌されるエクリン汗が、私たちが普段から「汗」と呼んでいるもので、ここから大量の汗がでるのが多汗症。汗をかいてすぐは無臭ですが、時間がたつと雑菌が繁殖して“汗臭く”なります。
腋臭症(えきしゅうしょう)、通称「ワキガ」はもうひとつの汗腺アポクリン腺から分泌される汗が元となり、特有の臭いを発するものです。腋臭症は思春期から中年にかけて発症するもので、親から遺伝するケースが多くみられます。耳あかを分泌する腺もアポクリン腺の一種であるため、この症状の人は耳あかが湿っています(耳あかが湿っていても腋臭症になるとはかぎりません)。シャツの腋(わき)がひどく黄ばんだりするのも特徴です。また、自分では全く気づかず、人に臭いを指摘されたときは、腋臭症の可能性があります。
「多汗症」「腋臭症」の治療は、外用薬(エクロックゲル・ラピフォートワイプ2.5%)やボトックス注射、プロバンサイン内服を行います。
「エクロックゲル」は日本ではじめて健康保険の適用が認められた原発性多汗症用の塗り薬です。エクリン汗腺が交感神経から伝えられる汗を出す司令を受け取れないようにブロックすることにより、発汗を抑えることが期待できます。
「ラピフォートワイプ2.5%」は薬液を不織布に含ませた、原発性多汗症用のワイプ型塗り薬です。使用法は1日1回、封入されている不織布で両ワキ下に塗るだけ。有効成分「グリコピロニウムトシル酸塩水和物」が汗腺細胞のムスカリンM3受容体に結合し、アセチルコリンの作用を阻害することで発汗を抑制します。
「ボトックス注射」は重度の腋の多汗症には保険適応の治療です。交感神経が過敏になると汗腺が常に働くため汗が多く流れます。ボトックスは交感神経から汗腺に出される命令をブロックすることで汗を極端に減らします。治療は表面麻酔のクリームを30分塗布した後、細かく注射します。効果の持続は個人差がありますが、6か月程度です。
「プロバンサイン」はアセチルコリンという物質の動きを抑制することができる内服薬で、脳からの「汗をかく」という指令を止めることができます。1日に3~4回飲むことができる薬ですが、服用から1時間で効果が出るため、汗を止めたいと思った時間に飲んで発汗を制御することができます。また、内服薬なので全身に効果があります。